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第6回研修講座報告

 第6回研修講座は「新人・若手弁護士のための紛争解決センター利用講座」と題して平成20年3月10日に開催されました。
 講師を務めていただいたのは49期の鈴木仁志先生です。
 鈴木先生は、東京弁護士会司法研究基金対象者となり米国にてADR・交渉技術等を研究されました。
 現在は、東海大学法科大学院専任教授を務めるとともに、東京弁護士会紛争解決センター運営委員会副委員長も務めています。
 いち早く法曹人口増員問題に警鐘を鳴らした「司法占領」という小説を執筆されていることでも著名な先生です。


 講義の内容は、我々が司法試験や司法研修所で触れることのあまりないADR及びあっせん・仲裁について、その由来・意義・分類について興味深いエピソードを交えながら、「過去の事実に着目し、法をあてはめていく」裁判型に対して、「事実、法のみならず感情、利益、未来も考慮に入れる」調停・あっせん型のメリットを分かりやすく説明してくださいました。
 また、東京弁護士会の紛争解決センターを利用することにより、2ヶ月で3回程度、期日が開催されるので、非常に複雑な事件も早期に解決する可能性があること、また公開の法廷に対して秘密が保持されること、あっせん人を選ぶことができクリエイティブ、フレキシビリティのある解決案を期待できること等のメリットが期待できるとのことでした。
 鈴木先生の「あっせんも万能薬ではないからすべての事案に適合するわけではないが、嫌なら3回程度で辞めればよいという感覚ですすめてみる。複雑な医療過誤事件が意外と結局2回、3ヶ月程度で解決したこともある。」との言が、紛争解決センターの適切な利用方法をあらわしているのかもしれません。このとき相手方は「訴訟になったら事実関係は否認するが」と断りながらも相応の和解案を提示してきたそうです。それならば弁護士から見ても解決手数料の分を成功報酬から値引きしてもペイしますね。
 鈴木先生ご自身も、弁護士として受任した事件の98%は和解で解決しており、平成18年は、その年受任した事件は全てその年のうちに和解で解決したとのことでした。確かに、事件が早期に解決することは依頼者にとっても事務所経営的にも望ましいことで、我々も「耳をダンボに」(古いです)して聞き入ってしまいました。


 また、他のあっせん機関として、交通事故紛争処理センターは、あっせん人弁護士の和解案については保険が下りるとの保険会社との協定が出来ており、被害者側は気に入らなければ和解をしなくてもよいのだから、被害者側代理人としては是非覚えておきたい機関であるとのことでした。
 そして、鈴木先生の現在の研究テーマである脳科学からみた紛争のもつ感情面について印象深い説明がありました。
 「紛争状態にある依頼者は社会から放擲されたように勘違いするほどのストレスを抱えて相談に来ると言うことを忘れてはならない。
 これを関係欲求の破綻というが、関係欲求が満たされない不快感は本能的な感情であって理屈を受け付けない。
 一度理屈を不快とインプットされるとその理屈は二度と通用しなくなる。
 我々法律家の切り札は理屈なのだから、いきなり切ってしまってはいけない。
 まずは相手方の話を傾聴し、受容して、関係欲求の破綻を緩和し、同時に情報収集しながら法律構成を行う。
 そして、理屈がとおる状態になってから、切り札を切らなければならない。」
 これは我々が日常行う法律相談にも通ずるものですし、和解交渉の相手方との関係でも意外と重要なことかもしれません。
 現在、鈴木先生は脳科学者とコラボレートして本を出版予定とのことです。
 私は日本でこうした側面から紛争解決を研究、理論化している人を知りませんでしたので、非常に勉強になりました。
 ただ、鈴木先生も注意を喚起していましたが、「無理な理屈を言っているとき、心情を理解し共感しても、弁護士としては内容を肯定してはいけない」など、なかなか実践は難しそうです。
 最後に、参加の半数が59期60期という新人・若手弁護士と言うことで、鈴木先生の考える弁護士のやりがいについてお話しがありました。
 「1つは、強者の横暴にたった1人で立ち向かっていく仕事。これはこれでやりがいのある仕事である。
 もう1つは、紛争にある部分社会に平和を取り戻す仕事。認識の相違に過ぎないような多くの紛争について、相手を悪人のようにいってたたきのめすことが妥当なのか、最善なのか。」
 紛争の当事者同士が紛争解決に向けて智恵を絞り合うという環境を構築する仕事。そしてクリエイティブな選択肢を提案する仕事。
 これらは裁判官や検察官にはなかなかできないことで、弁護士であればこそのやりがいの1つではないかと思いました。


 最後は大平に移動し懇親会を開催しました。


 会員の笑顔をみてください。
 あっせん技法は和解交渉だけではなく飲み会でも使えるのかもしれませんね。

 以前、医療ADRのシンポジウムに参加した際、ある先生がこのような話をしていました。
 「医療過誤の相談に来る依頼者には様々な欲求がある。損害を賠償してもらいたいだけではなく、真実を知りたい、謝罪してもらいたい、医者に社会的な責任を取らせたい等。
 しかし、民事訴訟の場では賠償をするべきか否かだけの問題に集約されて後は切り捨てられてしまう。」
 こうした依頼者の真意は、裁判所からだけではなく、弁護士の職業経験からも「深入りするべきではない。割り切るべきだ。そんなにつきあっていたら身が持たない。」等として切り捨てられがちであったりします。
 こうした職業経験というのは自分の失敗からも来ているのですが、今回の講義を聴いてそうした失敗を振り返ったとき、自分の言動は人間科学や脳科学の面から見て適切な対応だったのか、自分自身の対人関係・交渉技術が稚拙だったための失敗なのではないかとも思えてなりません。
 今回の講義を今後の自分の糧にしていきたいと思います。
 新人・若手弁護士会員の皆様にとっても何らかの糧になれば幸いです。

【文責:親和全期会執行部 鈴木康仁(東京法曹会・57期)】
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