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第3回研修講座報告

 平成19年9月18日(火)19時30分から、「研究者から民事裁判官になって感じたこと 民事裁判官から研究者になって感じたこと」と題し、和田吉弘先生を講師にお迎えして、第3回の研修講座を開催いたしました。先生は異色のご経歴(大学院→司法研修所→法学部助教授→裁判官→法科大学院教授・弁護士)をお持ちであり、先生ならではの切り口で、興味深いお話をうかがうことができました。


 東京地方裁判所での裁判官としてご活躍の当時を振り返るお話には、日頃、裁判所にて悲喜こもごもの体験を繰り返している我々としましても、先生の一言一句に「耳をダンボのようにして」(この慣用句、まだ使えますでしょうか(笑))、聞き入ってしまいました。


 裁判官が多忙との話はよく聞きます。和田先生も例外でなく、手持ちの単独事件は常時150件~170件、着任早々に同僚裁判官から「旅行カバンを準備しておくとよい」と言われ(注:記録運搬用)、24時間365日、意識があるときは常にいずれかの事件のことを考えているような状況であったそうですが、事件毎に当事者の関係図や手続の進行状況等を手際よく纏めたメモ(チラッと拝見できました)を作成するなど工夫し、睡眠時間を大幅に削りながら大量の事件を処理され、その成果として、ご自身が書かれた判決が高裁で変更されたのは1件だけ、それも慰謝料額が若干変更されただけであるとのことでした。先生の各事件への入魂ぶりに驚愕すると同時に、自分の日々の仕事を振り返り、身が引き締まる思いでした。
   手続一般についての述懐の中では、釈明権を積極的に行使して一方当事者の主張を明確にするよう誘導したら他方当事者の代理人から余計なことをするなと言わんばかりのクレームが出されたとのお話、また、敗訴が見込まれる側への手続保障の必要を強く意識し、各種申立の許否判断や判決起案に際し敗訴当事者が納得できるような決定や丁寧な事実認定を心がけていたとのお話がありました。大学での研究対象であった民事訴訟法の理想を、現実の法運用で実現したいとのお気持ちで裁判に臨まれていたことがひしひしと伝わってきました。


 裁判官から見た問題弁護士のお話は冷や汗ものでした。誤字脱字が余りに多い準備書面を作成する弁護士(3行に一箇所以上の割合で誤字があったそうです)、訴訟提起前に裁判所に法律解釈の相談電話をかけてくる弁護士、記録未整理で証拠番号に重複や欠落が多数ある立証を行う弁護士などのお話もありました。他山の石としたいと思います。
 意気込みが挫折感に変わることの多い(私だけ?)、尋問に関するご認識は印象的でした。先生のご経験では、陳述書の定着等の事情により、尋問で新しい事実を見出すことは殆どなく、尋問の意義は、証人や本人の性格(主張や陳述の真摯性)を見る機会を得ることにあったそうです。そして、問題のある(?)関係者は、なるべく裁判所に見せない方がよいのではないかとのお話がありました。尋問前にほぼ心証は形成されているとの話は巷間よく耳にするところでありますが、尋問は人格を見る機会であるとのお話には思わず膝をうちました(私事ですが、近く証人として尋問される機会があり、人格を裁判所に見抜かれそうでとても心配です)。
 締めくくり間際には、「法律の3つの世界」との言い回しで、先生が身を置かれた、大学、受験界(先生は、某司法試験予備校の講師もされ、絶大な人気を得ておられました。)および司法実務について、「大学は外国法の研究に異常なまでの重きを置く」「司法試験では一定時間内に一定の内容・量の解答を導くことが求められる」「実務では法律論と同等以上に事実論が重視される」世界で、各世界間に大きな隔たりがあることは問題であり、大学の法世界、受験の法世界は、実務の法世界を強く意識する必要があるとのお話がありました。それぞれの現場に身を置かれ、抱える問題を肌で感じたであろう先生の率直で熱意に満ちた御提言に感銘を受けました。


 講演終了後は、大手町の中華料理屋に場所を移し、和田先生を囲み、ビールや紹興酒の杯を重ねつつ楽しく懇親いたしました。ちなみに、料理5品(黒酢の酢豚が好評でした。)に飲放題付き(もちろん、和田先生のざっくばらんなトーク付き。)で、何とお一人3000円也。


 研修講座に懇親会、とってもお得な一夜でありました。



【文責:親和全期会執行部 廣瀬正司(二一会・51期)】
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