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HOME > 親和全期会・ケーススタディ >「不動産取得税課税処分取消訴訟」 第2回―事案の詳細な内容と争点となった不動産取得税の非課税規定―
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ケーススタディ「不動産取得税課税処分取消訴訟」

第2回 ―事案の詳細な内容と争点となった不動産取得税の非課税規定―

佐々木 広行

第1 不動産取得税に関する非課税規定
1  地方税法第73条の7第2号の3
1) 地方税法第73条の7第2号の3は不動産取得税が非課税とされる場合として「共有物の分割における所有権の取得(ただし、当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得を除く。)」を定めています。
 例えば、AさんとBさんが共同で甲土地を購入し、各自が2分の1ずつ持ち合っていたとします。この場合、土地購入時に、AさんもBさんも不動産取得税を課税されます。
2)その後、この二人が甲土地を甲1と甲2の二筆の土地に分筆し(分筆後の面積は等しいとします。)、Aが甲1を、Bが甲2をそれぞれ単独所有することにしたとします。
 さて、このような場合に、仮に、行政がAさんに対して甲1を取得したのだから不動産取得税を納めろと主張したらどうでしょうか(Bさんに対しては、甲2を取得したのだから不動産取得税を納めろと主張することになるでしょう。)。
 確かに、Aさんは甲1という不動産を取得しています。前回に述べたとおり不動産取得税が不動産の移転という事実にのみ着目し課せられる税金(流通税)だとするならば、このような場合も当然課税の対象になるはずです。
3)しかし、Aさんはもともと甲土地の2分の1も持分は有していたわけで、甲1を取得したといっても、実質的に見れば新しい不動産を取得したわけではありません。
 Aさんがもともと有していた甲土地に関する持分が、甲1になったというだけの話です。
 なにより、Aさんは甲土地を購入するときに不動産取得税を納税しています。
 Aさんにしてみれば、甲土地(2分の1)を購入する際に課税され、分筆したらまた課税され、なにか同じ土地について二回税金を取られているような気持ちになるでしょう。
4)前記のようなケース、つまり共有物の分割が行われた場合には、実は以前から、不動産取得税は課税されていませんでした。地方税法にはこのような場合を非課税とする明文規定はなかったのですが、さすがに、行政もこのような場合には課税すべきでないと考えたと見えて、通達によりこのようなケースでは不動産取得税は課税していませんでした。
5)ところが、この通達が訴訟で問題となりました(東京高裁平成10年8月5日)。
 このときの「問題のなりかた」というのはユニークで、この通達がいけないとか不合理だとかいう点は問題にならず(むしろ、裁判所も通達の中身は至極そのとおりであると判断しました。)、通達で非課税の場合を定めているのがおかしいと、日本国憲法は租税法律主義を採用していますから、課税する場合は無論のこと、非課税を定める場合でも、それは法律によって規定されるべきであり、通達でこれを定めてはいけないといったわけです。
 これはもっともな話であり、平成13年に地方税法が一部改正され、「共有物の分割における所有権の取得(ただし、当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得を除く。)の場合には非課税とする」旨の非課税規定が置かれることになりました。
 これが地方税法第73条の7第2号の3です。
6)なお、ここでいう「持分の割合」の意味ですが、原則としては「不動産の価格の割合」のことです。しかし、現実問題として、分割後の不動産の価格を事前に正確に調査することは困難です。そこで、運用上、当事者に意図的な租税回避の意思が認められない場合には、不動産の面積の割合によることも認められています(地方税法の施行に関する取扱について(都道府県税関係)昭和29年5月13日自乙府発代109号自治庁次長通達 5章5-2)。

第2 非課税となるケース
1 一筆の土地を分筆することにより分け合う場合
 前記のとおり、AとBが甲土地2分の1ずつ持ち合っていたとします。
 その後、この二人が甲土地を甲1と甲2の二筆の土地に分筆し(分筆後の面積は等しいとします。)、Aが甲1を、Bが甲2をそれぞれ単独所有することにしたとします。
 この場合は、Aは甲1を取得したことについて、Bは甲2を取得したことについてそれぞれ不動産取得税を課税されることはありません。
 仮に、AがBよりも広い土地を取得した場合、例えば、甲土地を2:1に分筆し、Aは広い土地(3分の2に相当する土地)を取得したとします。
 この場合、Aはもともと甲土地の2分の1の持分を有していたわけですから、分割により従来の持分よりも広い土地を取得したことになります。
 この場合には、分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分、すなわち6分の1(2/3-1/2)については課税されます。
2 数筆の土地を合筆し一筆の土地にした後、分筆し分け合う場合
 甲土地に接して乙土地があるとします。
 Aは甲乙両土地について3分の2の持分を、Bは甲乙両土地について3分の1の持分を有しているとします。
 そして、AとBが甲乙両土地を合筆して一筆の丙土地にした上で(当然、この段階では、AはBは丙土地を2:1で共有しています。)、丙土地を2:1で分け合ったとします。
 この場合も、不動産取得税は課税されません。
3 数筆の土地を合筆しないまま一体の土地として捉えて、分け合った場合
 2の場合で、AとBが甲乙両土地の合筆を省くこともできます。
 複数の共有地で、①相互に隣接しており②共有者が同一で、かつ③持分割合が同じであるときには、これらの土地は合筆することができます(不動産登記法)。
 合筆をして1筆の土地にしてから分け合おうが、合筆しないで分け合おうが経済的に見れば同じことですから、2の場合で、AとBが甲乙両土地を合筆しないで、分け合ったとしても不動産取得税は課税されません(前記取扱通知5-2)。

第3 本件事案と非課税規定
1 以上、不動産取得税に関する非課税規定たる地方税法第73条の7第2号の3の基本的理解を述べました。
 さて、本ケーススタディで問題となった事案は土地ではなく共有建物の分割でした。
 土地は分筆、合筆など巷間よく行われていますから理解もしやすいのですが、それでは建物はどうでしょうか。建物の分割というとピンとこないものと思います。
 一物一件主義との関係で一棟の建物に複数の所有権が成立するという事態は通常生じません。一棟の建物を分割して、それぞれが分割後の部分に所有権を有することができる場合とはどんな場合か、大学の学部の期末試験に出てきそうな問題です。
2 結論をいうと、建物を区分所有することができる場合です。
 土地の場合、一筆の土地を分筆することは簡単にできます。
 一筆の土地を複数の細かな土地に分筆すれば、それぞれの土地が所有権の目的となります。
 他方で、建物の場合はことはそう簡単ではありません。一棟の建物を自由気ままに分割して、それぞれの部分が所有権の目的となるなどといったら、それは一物一権主義を理解していないということでしょう。
 建物については建物の区分所有等に関する法律(以下、「区分所有法」という。)があり、同法に則らないと所有権の目的となるような部分を創設することはできません。
 言い換えれば、建物を共有する者が当該建物を分割しようと考えたら、区分所有法に則らなければならず、また分割後(区分所有権設定後)は同法の規律を受けることになります。
3 本ケーススタディで問題となった事案は以下のようなものです。
 相談者はA社とB社です。
 これら二社は都内に10階建てのマンション(戸数は10)を共有していました(持分は各社2分の1ずつ)。
 共有に至るまでの事案の概要に書いてあるとおりです。
 このマンションは戸数10戸のマンションですが、便宜上、各部屋にNo.1からNo.10までの番号をつけます。
 A,B社は協議の上このマンションを売却することにしたのですが、売りやすくするために10戸を5戸ずつ、No.1からNo.5までをA社が取得し、No.5からNo.10までをB社が取得することにしました。
このように分けるに際しては、A,B社ともに地方税法第73条の7第2号の3の規定を顧問税理士から聞かされていましたので、最終的に取得する各戸の専有面積が可及的に等しくなるように注意しました。
 その結果、No.1からNo.5まで取得したA社が取得した専有面積の合計は368.05平方メートルとなり、B社が取得したNo.5からNo.10の専有面積の合計は366.44平方メートルとなり、わずか1.61平方メートルだけA社の取得したところが広いという結果になりました。しかし、10戸の各部屋を完全に同一の専有面積となるように分け合うなど不可能ですから、A,B社は最大限努力したということになります。
 その後の手続としては、まず、本件マンションのNo.1からNo.10までの各戸について区分所有登記を行い(第1段階)、その後、No.1からNo.5を「共有物分割」を登記原因とする所有権移転登記手続を行いA社を所有者とし、No.5からNo.10につき同じく「共有物分割」を登記原因とする所有権移転登記手続きをしてB社を所有者としました。
 このように、A,B社はもともと2分の1ずつ共有していた戸数10戸のマンションを5戸ずつしかもの専有面積が可及的に等しくなるように細心の注意を払って分け合ったのですが、都税事務所は両社に対して取得した各部屋に丸々不動産取得税を課税してきました。
 つまり、A社に対してはNo.1からNo.5までを取得したことに対して、B社に対してはNo.5からNo.10までを取得したことに対して丸々課税してきたわけです。
 これに対して、A、B両社は当然の如く猛反発し、当該課税処分の取消しを求めて争うことにしました。
 A,B両社の言い分はシンプルなもので「共有している土地を分割すれば、分割前の当該共有物に係る持分の割合を超えない限り課税されないのであるから、建物についても同様に考えるべきである。A,B社は戸数10戸のマンションを5戸ずつ専有面積の合計面積が等しくなるように分けただけである。仮に、A、B社が土地を2分の1ずつ共有していたとして、これを等しい面積で分け合えば不動産取得税は課税されない。建物を分け合ったに過ぎない今回のケースも同様に非課税とすべきである。」というものでした。

 ここまでの話を聞いてみて、みなさんはどのようにお考えになるでしょうか。
 次回第3回目に、A,B社が請求した審査手続の実態とそこで交わされた双方の主張と下された結論を論じます。

以上

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